
モニター心電図を見る立場になったとき、最初に知っておきたいことをまとめました。波形を読む前の段階、つまり「モニターで何が分かるのか」「なぜ波形が乱れるのか」というところから書いています。
読む手順そのものは心電図の読み方は順番で決まるに、学習全体の進め方は心電図の学習は何から始める?にまとめています。
1. モニター心電図で分かること、分からないこと
モニター心電図は、胸に3つの電極を貼るだけで記録でき、患者さんから離れた場所のモニター画面に波形を映せます。長時間つづけて観察できるのが強みです。
分かること
- 脈が速いか遅いか
- 脈のリズムがそろっているか、乱れているか
- 危ない不整脈が出ていないか
分からないこと
- 心臓のどの部分に問題があるのか
ここが大事なところです。モニター画面に出るのは、基本的に1つの誘導、つまり1方向から見た波形だけです。そのぶん12誘導心電図よりも情報が少なく、病気がある心臓の部位や領域を正確に決めることはできません。
だからモニター心電図は、不整脈をつかまえるための道具だと考えてください。そして、おかしいと思ったら患者さんのところへ行き、12誘導心電図を記録する。これが基本の流れです。
2. 電極を貼る位置で、波形は大きく変わる
ここがいちばん見落とされやすいところです。
適当に3つ貼っても、それらしい波形は出ます。でも、電極をつける位置によって、描かれる波形は大きく変わります。P波が見えたり見えなかったり、QRSの向きが逆になったりします。
「昨日と波形が違う」と思ったとき、患者さんが変わったのではなく、電極の位置が変わっただけ、ということが起こります。貼り替えたときは、前と同じ位置に戻せているかを確かめてください。
電極の色と位置の決まりは、使っている機種や施設によって違います。自分の職場の基準を確認してください。
何を見たいかで、適した位置がある
モニターの電極の貼り方には、目的に応じた型があります。
- 不整脈を見たいとき:P波が見やすく、基線の揺れが少ない位置。NASA誘導などがこれにあたります
- 虚血性の変化(ST変化)を見たいとき:ST変化がはっきり出る位置。CM5誘導、CC5誘導などがこれにあたります
ただし、虚血性心疾患をきちんと評価するには、モニター心電図では足りません。必ず12誘導心電図を記録して判断します。モニターでのST変化は、あくまで「12誘導を取るきっかけ」です。
3. きれいな波形を記録するためのコツ
波形が乱れる原因の多くは、患者さんの心臓ではなく、貼り方にあります。
- 皮膚の脂をふき取る:アルコール綿で皮膚をきれいにしてから貼ります。アルコールで発赤が出たことのある方には使いません
- 体毛が多いときは、了解を得たうえで処理する:そのうえで皮膚を軽くこすり、電極と皮膚の接触をよくします
- 誘導コードを先に電極につけてから、胸に貼る:先に電極を胸に貼ってしまうと、コードを取りつけるときに胸を押すことになります。痛みにつながりますし、高齢の方では肋骨を傷める危険もあります
- コードをテープで軽く固定する:コードが引っ張られると波形が揺れます
- 電池を確認する:送信機の電池が弱ると、波形が届かなくなります
4. 波形が乱れたとき、原因を見分ける
波形がおかしいとき、まず「患者さんの心臓の問題」なのか「記録の問題」なのかを分けます。分け方の目安は3つです。
基線が大きくゆっくり揺れている
呼吸の影響が考えられます。息を吸ったり吐いたりするのに合わせて、波形全体が上下に波打ちます。電極の位置を変えてみてください。
基線が細かく震えている
ハムと呼ばれる交流電流の混入が考えられます。周りの電気機器の影響です。電極の接触や、コードの状態を確認します。
見たことのない、めちゃくちゃな波形が出ている
アーチファクトの可能性があります。アーチファクトは心臓の異常ではなく、体動や震えなどで余計な波形が混ざることです。
原因の多くは全身の筋肉です。心電図は心臓の電気を記録するものですが、電気が流れているのは心臓だけではありません。腕や足の筋肉も電気で動いているので、体が動いていると、その電気まで一緒に拾ってしまいます。緊張しているとき、発熱で震えているときに出やすくなります。機器のコネクタの接触が悪いだけでも、変な波形になります。
アーチファクトには決まった形がありません。勉強したどれにも当てはまらない、変な波形だと感じたら、まずアーチファクトを疑う。これが実用的な見分け方です。
そして、アーチファクトかどうかを画面だけで決めないでください。判断に迷ったら患者さんを見に行く。動いているだけなのか、本当に具合が悪いのかは、ベッドサイドですぐ分かります。
5. おかしいと思ったときの動き方
モニターで気になる波形を見つけたとき、順番はこうです。
- 患者さんのところへ行く:意識はあるか、顔色はどうか、話せるか。画面より先に、人を見ます
- 12誘導心電図を記録する:モニターでは分からないことが分かります
- 前回の記録と見比べる:前からそうなのか、今日はじめて出たのかで、意味が変わります
- 伝える:何が、いつから、患者さんはどうか。この3つがそろっていれば伝わります
所見の名前で言えるのがいちばん伝わります。「心房細動が出ています」と言えれば、受け取る側もすぐ動けます。
まだ名前が出てこないときも、見たままで伝われば大丈夫です。「脈がバラバラで、P波が見当たりません。前回の記録では規則的でした。ご本人は話せていて、血圧は保てています」。ここまで言えれば、十分に伝わります。
よくある質問
画面に出ている心拍数は信じていいですか
参考にはなりますが、うのみにはしないでください。T波を1拍として数えてしまい、実際の倍の数字が出ることがあります。数字がおかしいと感じたら、自分でR波とR波の間隔を数え直してください。
記録紙の紙送りは1秒あたり25mmなので、横の小さい1マスが0.04秒、大きい1マス(5mm)が0.2秒です。
P波が見えません。異常ですか
異常のこともありますが、電極の位置で見えなくなっているだけのこともあります。P波が見やすい貼り方に変えると見えることがあるので、まず位置を確認してください。
モニターのアラームが多すぎて、どれを見ればいいか分かりません
まず、電極の貼り方と接触を見直してください。記録の問題から出るアラームが減るだけで、鳴る回数はかなり変わります。そのうえで、設定値が患者さんの状態に合っているかを確認します。
モニター心電図だけで心筋梗塞は分かりますか
分かりません。モニターは1つの誘導しか映さないので、心臓のどの部分に問題があるかまでは決められません。虚血性心疾患を評価するには12誘導心電図が必要です。モニターでST変化らしきものが見えたら、それは12誘導を取るきっかけと考えてください。
波形が読めるようになるには、どれくらいかかりますか
モニター心電図でリズムを読むところまでなら、順番どおりに進めればそう長くはかかりません。大事なのは、毎日少しずつ実際の波形を見ることです。
もっと体系的に学びたい方へ
モニター心電図は、電気の流れと波の意味が分かっていると、ぐっと読みやすくなります。逆に、波形の形だけを覚えようとすると、見たことのない波形で止まってしまいます。
心電図CAMPでは、心臓の電気の流れから順番に学び、モニター心電図のリズムから12誘導の主な所見までを4週間で学ぶ形にしています。くわしくは心電図CAMPとはをご覧ください。
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参考文献
- 大島一太『これならわかる!心電図の読み方』モニター心電図は前胸部に3個の電極をつけるだけで記録でき、主に1つの誘導であること。不整脈の診断に有効だが、病気がある部位や領域を正確に診断することは困難であること。おかしいと思ったら患者のもとへ行き12誘導を記録すること(p.9)。電極をつける位置によって描かれる波形が大きく変わること、電極を貼る手順、疾患に応じた電極の位置、基線が動揺する原因は呼吸の影響、基線が細かく揺れる原因はハムと呼ばれる交流電流障害であること(p.13、p.14)
- 『レジデントのための これだけ心電図』(日本医事新報社)アーチファクトは心臓の異常ではなく、体動や震えなどで余計な波形が入ること。原因の多くは全身の骨格筋で、緊張や発熱による震え、機器のコネクタの接触不良でも生じること。決まった波形はないこと(p.82)
- 『心電図パーフェクトマニュアル』(羊土社)紙送り速度25mm/秒、1mm=0.04秒(p.24)。完全右脚ブロックではQRSは0.12秒以上(p.163)

