
心電図が読めないとき、足りていないのは知識の量ではなく、読む手順であることがよくあります。手順がないと、目立つところだけを見て、目立たないところを飛ばしてしまうからです。
この記事では、心電図を読む順番を、モニター心電図と12誘導心電図に分けてまとめます。学習の全体像は心電図の学習は何から始める?おすすめの順番と勉強法にまとめています。
順番を決めると、何が変わるか
読む順番を決めると、次の3つが変わります。
- 見落としが減る。順番が決まっていれば、飛ばしたところに自分で気づけます
- 詰まった場所が言える。「P波までは分かったけれど、そのあとが分からない」と言えれば、聞く相手も答えやすくなります
- 迷う時間が減る。どこから見るかを毎回考えなくてよくなります
大事なのは、手順の中身より、毎回同じであることです。『レジデントのための これだけ心電図』にも、絶対的にこれがよいという系統的な読み方はない、と書かれています。まずは1つ決めて、それを繰り返してください。
大前提:先に「急ぐ心電図かどうか」を見る
順番どおりに読む前に、やることが1つあります。急ぐ心電図かどうかを、先に判断することです。
臨床では時間が限られています。順番に全部見てから「これは急ぐものだった」と気づくのでは遅いので、まず全体をひと目見て、急ぐかどうかだけを決めます。そのうえで、急がないと判断できたら、落ち着いて順番に確認していく。この2段構えが基本です。
急ぐかどうかをひと目で判断できるようになるには、危ない波形を先に覚えておく必要があります。ここだけは、形で覚えてかまいません。
モニター心電図を読む順番(4ステップ)
モニター心電図は、基本的に1つの誘導しか映りません。そのぶん分かることは限られますが、脈のリズムを見るには十分です。次の4つを、いつも同じ順番で見てください。
ステップ1 脈は速いか、遅いか
まず心拍数です。画面の数字を見るだけでなく、自分でも確かめてください。
記録紙の紙送りは1秒あたり25mmと決まっているので、横の1mm(小さい1マス)が0.04秒、大きい1マス(5mm)が0.2秒です。R波とR波のあいだが大きいマス何個分かを数えれば、脈の速さの見当がつきます。
画面の数字は、いつも正しいとは限りません。T波を1拍と数えてしまい、実際の倍の心拍数が出ることがあります。数字がおかしいと感じたら、自分の目で数え直してください。
ステップ2 リズムはそろっているか
次に、R波とR波の間隔がそろっているかを見ます。定規や紙の端を当てて、前の間隔と次の間隔を比べるのが確実です。
- そろっている
- ときどき早い拍が入る
- まったくバラバラ
この3つのどれかをまず決めます。ここが決まるだけで、考えられるものがかなり絞られます。
ステップ3 P波はあるか、QRSとつながっているか
P波は心房が興奮するときに出る波です。QRS波の前に、小さな山として出ます。
- P波があるか
- P波1つに対してQRSが1つ、対応しているか
- P波からQRSまでの時間(PQ間隔。PR間隔とも呼びます)は毎回同じか
P波が見当たらない、P波はあるのにQRSが続かない、PQ間隔が伸びていく。ここで気づけることはたくさんあります。なお、PQ間隔が0.20秒(大きい1マス分)を超えて延びている場合は、伝わり方が遅れているサインです。
P波が見えにくいときは、電極の位置を見直すと見えるようになることがあります。くわしくはモニター心電図の見方にまとめました。
ステップ4 QRSの幅は狭いか、広いか
最後にQRS波の幅です。狭いか広いかで、電気がどこを通ってきたかが変わります。
幅の目安は0.12秒(小さい3マス)です。これより広ければ、心室の中を通るいつもの道を使っていない可能性があります。
ここまでの4つを毎回同じ順番でやると、モニター心電図で見るべきところはひととおり押さえられます。
12誘導心電図を読む順番(7ステップ)
12誘導心電図は情報が多いぶん、順番を決めないとまず見落とします。『レジデントのための これだけ心電図』では、次の順序で確認していく流れが紹介されています。
- 心拍数:速いか遅いか。速いときも遅いときも、必ず原因を考えます
- 調律:電気の出どころがいつもの場所かを見ます。Ⅰ誘導とⅡ誘導でP波が上を向いていれば、いつもどおりです
- 軸偏位:電気が進む向きのかたよりのことです。Ⅰ誘導とaVF誘導で、QRS波が全体として上向きか下向きかを見ます
- 回転異常:胸につけた電極を順に見ていくと、あるところで波が下向きから上向きに入れ替わります。その位置がいつもと違わないかを見ます
- P波:高すぎないか、幅が広くないか、形が割れていないか
- QRS波:異常なQ波はないか、高すぎないか低すぎないか、幅は広くないか
- ST変化:基線から上がっていないか、下がっていないか
数値の細かい基準までは、この記事では扱いません。同書に一覧でまとまっているので、1冊持っておくと確認が早くなります。
大事なのは、7番まで必ず通すことです。目立つ所見が1つ見つかると、そこで満足して止まってしまいがちですが、見落としは、目立つ所見の陰に隠れます。
どちらの場合も、最後に必ずやること
前回の記録と見比べる
手順の最後に、必ず入れてほしいことがあります。前回の心電図と見比べることです。
同じ波形でも、前からずっとそうなのか、今日はじめて出たのかで、意味がまったく変わります。もともとその波形だった方に慌てても仕方がありませんし、逆に「いつもと違う」と言えるなら、それ自体が伝えるべき情報になります。
教科書でも、判読のときに以前の心電図と比べることは繰り返し出てきます。学習の段階から、比べるくせをつけておいてください。
波形だけでなく、患者さんを見る
心電図は患者さんの一部しか写していません。同じ波形でも、意識があるかないか、血圧が保てているかどうかで、次にやることは変わります。
モニター心電図でおかしいと思ったときは、患者さんのところへ行き、12誘導心電図を記録する。これが基本の流れです。モニターは1つの誘導しか映らないので、心臓のどの部分に問題があるかまでは決められません。
読んだあと、どう動くか
読む手順を持つ目的は、名前をつけることではなく、次の行動を決めることです。読み終わったら、次の3つを言葉にしてみてください。
- いつからか:前回と比べて、変わったのか変わっていないのか
- 患者さんはどうか:症状はあるか、意識と血圧は保てているか
- 自分は何をするか:すぐ人を呼ぶのか、12誘導を取るのか、しばらく見て記録を残すのか
所見の名前まで言えるのがいちばんです。名前で言えると、受け取る側がすぐ動けます。
まだ名前が出てこないときも、見たままで伝われば大丈夫です。「P波が見当たらなくて、脈がバラバラです。前回の記録では規則的でした」と言えれば、伝わります。
よくある質問
手順を覚えられません
紙に書いて、心電図を見るときに横に置いてください。覚えてから使うのではなく、使っているうちに覚えます。慣れるまでは、順番を書いたメモを見ながらで十分です。
途中で分からなくなったら、どうすればいいですか
分からないところは飛ばして、最後まで通してください。そのうえで「ここが分からなかった」と覚えておきます。全部が分からないのと、1か所だけ分からないのとでは、まったく違います。
モニター心電図と12誘導心電図で、順番を変える必要はありますか
見る対象が違うので、内容は変わります。ただし、先に急ぐかどうかを判断してから順番に確認するという枠組みは同じです。まずモニターの4ステップを身につけて、そのあと12誘導へ広げるのがおすすめです。
機械が出す診断名を見てはいけませんか
見てかまいません。ただし、自分で読んだあとに見てください。先に見ると、それに引っ張られます。機械の診断は間違うこともあるので、自分の読みと合わなかったときこそ、学ぶ機会になります。
順番を身につけるために
読む順番は、知っているだけでは身につきません。実際の波形で、何度も同じ順番をなぞる必要があります。
心電図CAMPでは、最初に読む手順を押さえてから、P波・QRS波・ST-Tと順番に学んでいく形にしています。毎週の復習では、実際の波形を自分で読む問題を解きます。くわしくは心電図CAMPとはをご覧ください。
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参考文献
- 『レジデントのための これだけ心電図』(日本医事新報社)先に緊急性の高い心電図かどうかをパターン認識で判断し、そのあと漏れがないように系統的に見ること。系統的な読み方の順序(心拍数→調律→軸偏位→回転異常→P波→QRS波→ST変化)と、各段階で見る基準(p.212〜p.218)
- 大島一太『これならわかる!心電図の読み方』モニター心電図は主に1つの誘導で、心臓のどの部分が悪いかを正確に診断することは困難であること。おかしいと思ったら患者のもとへ行き12誘導心電図を記録すること(p.9)。P波は心房の興奮、QRS波からT波は心室の興奮を表すこと(p.15)。PQ間隔の延長は0.20秒超(p.86)
- 『心電図パーフェクトマニュアル』(羊土社)紙送り速度25mm/秒、1mm=0.04秒(p.24)。正常なP波はⅠ・Ⅱ誘導で陽性、Ⅱ誘導で幅3mm未満・高さ2.5mm未満(p.31、p.45)。完全右脚ブロックではQRSは0.12秒以上(p.163)

